waniwaniの雑記帳

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なぜ、ユーフォなのか(『響け!ユーフォニアム』感想)

私は中・高男子校で、吹奏楽部に所属していました。担当楽器はユーフォニアム。皆さんご存知の通り、2015年春クールに放送されたアニメ『響け!ユーフォニアム』で主人公である黄前久美子が担当している楽器です。

こういってはなんですが、正直な所「ユーフォニアム(以下ユーフォ)」は目立たない楽器です。ですから、視聴者の多くはこのアニメを見るまではサックスやトランペット、チューバやクラリネットは知っていても、ユーフォという楽器については金管なのか木管なのか、いやいや「名前」すら知らなかったと思います。

ユーフォはとってもマイナーな楽器です。吹いてる本人でさえ低音なのか高音なのか分からないし、主旋律(いわゆるメロディ)は回ってこないし、ブラスバンドにあっても無くても然程の違いはなく、オーケストラにはそもそもパートがないし、結局誰も知らないし、運動部の人に話しても「UFO?焼きそば?宇宙人か何か?」と言われる始末。(運動部の人に話してもというのは偏見かもしれませんのであんまり気にしないでください)

それでもユーフォは大切なパートです。ブラスバンドにおいて、ユーフォの役割は「何でも屋さん」です。もちろんパートの譜面はあるけど、時には低音パートの音の厚みを増やすためにお手伝いをしたり、時には中音でメロディを奏でたり(稀ですが)。

原作者の武田綾野さんは小・中学時代に吹奏楽をしていたそうです。武田氏がどの楽器を演奏していたのかはわからないですが、ユーフォというパートを彼女がどういう風に感じとっていたかが忠実に伝わってきます。

私は、ユーフォの良さは未経験者には理解し難い(理解し得ない)と思っていました。どんなに力説しようとも、そもそもユーフォを知らない人に話したって無駄だったし、ユーフォの音を聞かせても「ふーん」みたいな反応をされました。合奏を聞かせても、ユーフォの音が分からない、仮に分かったところで「どのへんが大切なの?」という反応。

ごもっともです。先に話したとおり、ユーフォは全く目立たたない楽器です。音も他の金管楽器より低く、かつ小さく、目立つ要素は皆無です。それでいて必要とは何事か。

でも、このアニメ「響け!ユーフォニアム」を視聴された方になら分かる筈です。ユーフォの苦悩と主張が。「私はここにいるんだぞ!」と主張したいけど、主張できず、でも主張したい。そんな思いがこのアニメにはあったと思います。

私がユーフォ奏者(誇張表現ですが)だから分かるのではないと思います。コンクールに向けての心情の描き方や必死さ、プライド、全てが本当に忠実でした。

びっくりしました。こんなアニメを放送してちゃんと人気が出るのだと。もしかしたら「京都アニメーション」さんだからこそなのかもしれません。美麗な絵柄で、可愛らしく、かつクドく描いた結果なのかもしれません。それでも、この作品に価値があったのは間違いないと思います。間違いなく今期ナンバーワンの作品です。1話1話の価値はそこまでありません。でもその積み重ねが13話という決して長くない話数で纏まって、感動を与えてくれる作品はそうありません。

あえて「見てください!」とは言いません。でも見る価値は存分にあると思います。是非。