waniwaniの雑記帳

自作PC/就活論/労働問題/大学生活/社会問題 などについて書きます

「歯車」になりたい就活生

先日、ある企業のセミナーにお邪魔した。具体的な企業名などは規則で書けないが、大きなホールに「企業説明」「座談会」などといった個別のブースが用意されており、そこで様々な講演を受けることができるイベントだった。さて、いくつかブースがあるなかで、人気のブースがあったのだが、そこで私が目にした光景はまさに「就活の闇」を表していたと思う。

そのブースでは社会人1年目~3年目くらいの若い社員が就活生向けに自身の「ES」を公開したり、志望動機の作り方などを教えていた。就活生はその講演を聞きながら必死にESや志望動機をメモに書き留め、いや「書き写して」いた。

何が「闇」なのかと言うと、他人のESを書き写してどうなるのかがさっぱり分からないからだ。本来というか、そもそもESや志望動機なんてものは「自分のこと」を書くものであって、他人がどういう志望動機だとか自己PRがなんだとかなんてことは、ほとんど関係のないことであるからだ。分かりやすい自己PRの書き方とか、論理的に筋の通りやすい書き方というのはあるかもしれないが、それはわざわざ企業のセミナーに行ってまで学ぶものでもないし、皆が持っているスマートフォンやパソコンで簡単に調べることができるものだ。ましてや、必死になって書き写すようなものでもない。

これこそが今日本の就活が「就社活動」と呼ばれる一面であることは間違いないだろう。彼らは「職につきたい」わけではないのである。あくまで「大企業に入りさえすればいい」という考えであるのだ。

どうして歯車になりたがるのだろうか。いや「歯車にはなりたくない」筈なのだ。誰しもが「半沢直樹」で見られたような「蜥蜴の尻尾切り」には遭いたくないだろうし、これからの世の中で使い捨てられる人材にはなりたくないと、心のどこかでは思っているだろう。もしかしたら、歯車になってそこでスキルを学んでやろうなどと思っているのかもしれない。なんにせよ、そう思うのならば「大企業ならどこでも良い」という考えは捨て去るべきだし、その理由は、

「貴方がしたいのは『就職』ですか?それとも『就社』ですか? - ぼっちの小部屋

大企業の採用情報ページは見るな - ぼっちの小部屋

を見てもらえれば理解できると思う。

ここではこのセミナーブースでの出来事を取り上げたが、インターネットに公開されている「ES例」や「志望動機例」でも同じことである。他人の思いは自分の思いではないし、自分がやりたいことと誰かがやりたいことが一致する、また自分がしてきたことと誰かがしてきたことが一致する、ということはまずあり得ないのである。

あたかも就活に答えがあるように「こう書けば受かりやすい」「こう書かないと落ちる」というように就活生を煽る記事や本、一部のキャリアセンター(就職課)などの発言を鵜呑みにするようなことはしないでいただきたい。

「貴方は貴方らしく」なんて臭い言葉を使う気は無いが、自分の人生が決まるかもしれないESを他人のオマージュで済ませてしまうことは絶対に避けて欲しいと切に願う。