ベンチャー志向という罠
先日、某人材コンサルのセミナーに行き、面談をしたので覚え書き程度に書いておくことにする。
◆大企業が求めている人材像
・リスク回避を会社ではなく自分に置く人材。
・つまり成長を企業に求めるのではなく、自分自身で行動し成長する人材。
・企業におんぶ抱っこですがりつことする学生は要らない。
・それでいて、企業に利益を長期的にもたらす人材。
◆ベンチャーについて
・ベンチャー志向の学生は「夢があり、自分が将来なりたいビジョンを想像できている」。
・そのため、仮に現時点で利益をもたらさないとしても、OJTで学習し成長し、利益をもたらす可能性が高い。
・ただ、ベンチャーは長期的な就業面で問題があるのは確か。
・しかし、ベンチャーで働けば転職のためのスキルが身につく可能性が高い。
◆大企業について
・ベンチャーと比較して確かに雇用面では安定しているが、グローバル化がこれまで以上に進む可能性があり、その中で生き残るかどうかで考えればベンチャーと比較しても不安要素は残る。
・そのため、大企業でまったり自己を拡充する時間は残されていないのではないか。
以上を踏まえて、成長株ベンチャーもしくは外資系大企業への就職をオススメする。ということらしい。
論理は通ってるし現実味もそこそこあるので、否定するまでには至らない。
が、やはり机上の空論感は否めない。話す相手を間違えた感もある。
この人自身、この人材コンサルというベンチャーで働こうとし、それなりのポジションにいるわけだから、それなりに「やりたいこと」「成し遂げたいこと」があってのことだと思う。だからこそ自己肯定のために、こういう心を折ることを平気で言うし、そのために相手を否定することも厭わない。
私は、別に大した夢はない。だからといって自分の価値観を否定される筋合いもない。単純に、ベンチャーよりも大企業に就職することの方が自分の価値観に当てはまっていると考えるし、ベンチャーで早くから責任を押し付けられて心身すり減らして働くことに対して持たないとも思う(そう反論したら、「そんな人材バイトや非正規でいいよねw」と笑われた。確かにそうだと思う。)。
でもね、非正規やバイトじゃ企業内教育なんてやってもらえないし、ますます成長なんて出来ないと思う。正社員としてそれなりの企業に就職することは人生設計として欠かせない部分だし、若いうちは無茶をしてベンチャーなんかで自己開発するのもいいかもしれない。ただ、そこで抜け落ちる可能性を見ないのは間違っているし、私は万が一にでも抜け落ちる可能性を見たくはない。だからそれを「おんぶ抱っこ」と嘲笑されることについては誠に遺憾だが、その一言で片付けてしまうあたり思慮が浅いかなとも思う。
「ベンチャーで自分が成長する可能性」と「(大)企業で自分が成長する可能性」どちらも大きくは変わらない。変わるとすれば、「どうありたいか」の一本柱があるかないかであって、それを見つけることが就活本番までにやるべきことではないかなと気が付かされた。そういう意味では非常に面談して心を折られてよかったかなとは思う。
ベンチャーじゃないとできないこと、大企業じゃないとできないこと、きちんと把握すべきかなと思う。
「それなりの社会的地位で、美人な嫁をもらって、家族を養える金を得て、死ぬ」。ただそれだけのために、意識の高い就活生は「あれやこれや」と考えをふくらませすぎだろう。その生き方が「かっこいい」か「かっこよくない」かは関係ないし、必要な保障のために自らリスクを孕む必要はない。
夢のないものがベンチャーに行く理由はどこにもない。行ったところで脱落するか、ベンチャーそのものを脱落させるかのどちらかだろう。